ある所に、燕と萬の鳥と集まり居けるほどに、燕申やう、「こゝに麻といふ物蒔く所あり。をの\/是を引き捨て給へかし」と歎きければ、諸鳥是に與せぬのみならず、かへつて燕をあざける。燕申やう、「御邊たちなに事を笑給ふぞ。この麻と申は、苧といふ物になん成て、わなぞかづらぞとて、われらがためには大敵也。をの\/は後日のわざはひを知り給はず」と申けれども、諸鳥とも同心せず。その時、燕申やう、「所詮、御邊たちと向後與する事あるべからず」とて、諸鳥に變つて、燕は人の内に巣をくふ事も、これや初にて有ける。
そのごとく、あまたの人の中をひ出て能道を示すといへ共、用いずは卷ひて懷にす。又、いかに人同やうに惡ししと云共、其味をなめ心みよ。智者のいふこと、などかは惡かるべき。