ねたなを帝王、いそ保に問給はく、「けれしやの國の駒いな鳴時は、當國の■驛胎む事あり。いかん」との給へば、いそ保申けるは、「たやすく答がたふ候。いかさまにも明日こそ奏すべけれ」とて、御前をまかり立つ。
伊曾ほ、その夜猫を打擲す。所の人これをあやしむ。そのゆへは、かの國には天道を知らず、猫をおもてと敬ひける。かるが故に、これを奏聞に達す。御門この由きこし召ていそほを召し出され、「汝なにによつてか猫を打つや」との給へば、いそほ答云、「今夜この猫、我國の庭鳥を食ひ殺し候程に、さてこそいましめて候へ」と申ければ、「いかでかさる事のあるべき。當國とその國とは、はるかにほど遠き所なれば、一夜がうちに行かん事いかに」との給へば、いそほ申けるは、「けれしやの國の駒いななきける時、當國の■驛胎む事あり。そのごとく、當國の猫もわが國の庭鳥をも■らひ候」と申ければ、「げにも」とのたまひけり。



