有時、鳥、けだものとすでに戰ひにおよぶ。鳥の云、軍に負けて今はかうよと見えける時、かうもり畜類にこしらへ返る。鳥ども愁へて云、「かれらがごときの物さへけだものに降りぬ。今はせんかたなし」と悲しむ所に、鷲申けるは、「なに事を歎くぞ。われこの陳にあらんほどは頼もしく思へ」と諌めて、又けだものの陳に押し寄せ、このたびは鳥の軍よかんめれ、たがひに和睦してんげり。その時、鳥ども申けるは、「さてもかうもりは二心ありける事、いかなる罪科をかあたへん」といふ。中に故老の鳥敢へて申けるは、「あれ程の物をいましめてもよしなし。所詮けふよりして、鳥の交はりをなすべからず。白日に徘徊する事なかれ」といましめられて、鳥のつばさを剥ぎ取られ、今は澁紙の破れを着て、やう\/日暮にさし出けり。
そのごとく、人も、したしき中を捨てて、無益の物と與する事なかれ。「六親不案なれば、天道にも外れたり」と見えたり。